桜鱒物語2

 

 

~濁流の詩~

『病』

人間や動物の心や体に不調または不都合が生じた状態のこと。

 

まさにソレです。

 

サクラマスが釣りたくて・・いや、釣れる気がしてなりません。

早速、GW明けに2度目の遠征です。

 

『唇をかみしめて』を聴きながら深夜の高速道路を福井に向かいます。

実は、このお気に入りの音楽を聴きながらポイントへ向かう行為は

集中力を高めるのにうってつけなのです。

 

例えば、人気のない場所で夜釣りする場合、怖いTV番組など観ていたら

ゾクッとしますよね。

それは集中力が足りないんです。

 

集中していればロッドを握ったとたん恐怖は吹き飛びます。

さらに、誰もいない場所で釣りをしていて肩をポンポンと叩かれても

『邪魔しないでくれっ』

と言って釣りに集中できるのです。

 

そして、サクラマス、サツキマスなど『理屈だけでは釣れない魚たち』に

驚異の集中力が導きだした想像力とひらめきが

難攻不落のターゲットたちに近づく武器になるのです。

 

 

理屈なんかは後からついてくるものなのです。

 

ミウラデザイン

 5月某日、まずは前回キャッチした九頭竜橋上流左岸ポイントです。

GWの初釣行から濁りとの戦いが続いていますが

当日も降雨による増水に伴い、濁りがきつくなっていきます。

 

 

 

じっくり攻める余裕はありません。

攻める範囲を絞り、表層から徐々にレンジを下げていくとヒット!

しかし、残念ながらフックアウト

 

その後は続かず、ポイント移動になります。

シーズン終盤ですが、先入観を捨て、下流域のポイントへ移動します。

ここはえちぜん鉄道上流左岸。

 

釣行前から目をつけていたポイントです。

水深はあまりないのでフローティングミノーで攻めますが、1投目バックラッシュ

糸をほどいているとバイトです。

 

おそらくシーバス。

 

しばらくして、〇〇〇ミノーに替えて1投目

ひったくるようなアタリ!

 

スレ気味なのか走られます。

正体はわかりませんが、劣化したドラグワッシャ―がぎこちなくラインを出します。

数度の突っ込みの後、美しい魚体がジャンプします。

 

まぎれもないサクラマスです。

サイズもそこそこありそうです。

 

バレる心配もなさそうなので、時間をかけ慎重にネットイン!

 

スリムな魚体ですが、60UP。いわゆる二尺山女

サクラマス 佐藤亮 ミウラデザイン
サクラマス ミウラデザイン 
サクラマス 佐藤 亮 ミウラデザイン

このサクラマスに出会うため、多くの太公望たちがこの地を目指すのです。

しばし、その姿に見惚れます。

 

その後、3度のアタリがありましたがヒットには至らず。

濁りが濁流へと変化する川を後に初日を終えました。

夜はお決まりのスーパー銭湯です。

 

すっかりゆでダコではなくなった私に福井美人は興味をしめしませんが

福井の湯は、私の心と体を癒してくれます。

 

翌朝、さらに濁りの増した九竜川。

 

サクラマスからのコンタクトは無く、流れてくるゴミが

私の集中力を奪っていきます。

 

さすがに私の漁師力学をもってしても、この状況を打開することはできず

メジャーポイントを数カ所みて廻るものの、人がそこにーおるんよねぇー

そして、めずらしく余力を残して竿を置くことになるのです。

 

将棋の世界では、AIが人間に勝る時代がきました。

ある名人が、人が戦ってきた将棋の世界は、将棋という広い宇宙の

ほんの一部の領域だと気づかされたそうです。

 

理屈という領域の向こう側に、大魚たちが悠々と泳ぐ姿が思い浮かびます。

簡単に到達できるものではありませんが、その領域に足を踏み入れることが

残りの釣り人生で歩んでいきたい道である。

 

できれば踏み荒らさずに。

 

佐藤 亮